FAQ

遺伝子特性学分野に関するFAQ

分野の研究の内容は?

植物の生き方の基本は独立栄養成長(光合成によりエネルギーを得ていること)と無限成長(未分化な細胞を維持して発生を続けること)です。我々の研究室では、植物に特徴的な生長分化の仕組みを分子レベルで解明することを目指しています。また、有性生殖といった広く生物に共通する現象についても植物を用いてアプローチすることで理解が進むと考えています。具体的には、光や温度などの環境要因のセンシングと情報伝達機構、有性生殖の誘導と性分化機構、植物ホルモンを介した個体統御などに関する研究を植物の環境応答と適応戦略の点から取り組んでいます。詳しくは,研究内容のページを参照してください。
わくわくしなければ研究でない。自由な発想で、アカデミアの研究室としての役割を果たす研究を目指しています。

人材養成目標は?

研究の実践を通して個人の潜在的な能力を引き出し、社会で活躍できる人材を養成したいと考えています。このために、チームとしての協調性と独立したひとりの研究者としての課題解決力を重視しています。研究室では、実際に植物科学の最前線の基礎研究に深く取り組み、その過程を通して自由な発想と実践力を身につけます。特にサイエンスに特有な考え方を身につけることは、目の前の研究を進めるためだけでなく、将来各自がどんな問題に出会っても理路整然と考えて答を導くために大切です。卒業後は、生命科学を推進する研究者はもとより、民間を含む研究機関での技術開発者、教育・行政のリーダーとして活躍することが期待されます。

研究にはどのような生物を用いているのですか?

 研究室ではモデル生物を用いて、分子遺伝学的アプローチ、ゲノム解析、ポストゲノム解析を強力に進めています。
 なかでもゼニゴケは、我々の研究室を象徴する生物です。ゼニゴケは、陸上植物進化において維管束植物(小葉植物、シダ植物、裸子植物、被子爵物など)と姉妹群を形成するコケ植物の苔類(タイ類)に属し、進化的な研究にも重要な植物です。当研究室では、植物のオルガネラゲノムとして世界に先駆け、葉緑体(1986年)、ミトコンドリア(1992年)がもつ全ゲノム情 報を解明し、その成果は、専門誌に発表するとともに、その成果は分子細胞生物学の代表的な教科書であるMolecular Biology of the Cellにも記載されています。2007年には植物の性染色体としてははじめてY染色体(現在は半数体の性決定に関わるためV染色体と呼ばれる)の全構造を明らかにしました。ゼニゴケの全ゲノム構造(ドラフトゲノム配列)は当分野が牽引した国際共同研究により明らかにされています(Cell誌に掲載)。現在では、染色体レベルの精密なゲノム構造がわかっています
 現在は、世代の大半が半数体であることや、単純な体制、ゲノムの遺伝子の重複の少なさを生かしたゼニゴケの分子遺伝学を展開しています。アグロバクテリアを介する形質転換が 高い頻度で起こることを見いだしました。相同組換えによる遺伝子破壊実験系も2011年に確立しました。これまでのモデル植物とはひと味違う、新たな材料として大いに注目しています。モデル生物として優れた特徴をもつゼニゴケは動物も含めた多細胞生物のなかでも極めて有用な材料と言えるでしょう。光受容と信号伝達機構、植物ホルモンの信号伝達、成長分化の個体統御をテーマにした研究のモデル生物として利用しています。40億年近い生命歴史において植物の陸上進出はもっとも大きな出来事のひとつです。ゼニゴケを材料に、現在の陸上植物の繁栄につながる仕組みの普遍性と多様性を知りたいと考えています。

研究テーマは?

2023年度の修士論文のタイトルは以下の通りです。
「苔類ゼニゴケにおいて生殖細胞分化を制御するMpBONOBO遺伝子の光周期を介した転写制御機構の解明」
「苔類ゼニゴケフィトクロムによる遠赤色光シグナル伝達機構の解析」
「雌雄同株の苔類アカゼニゴケにおける季節特異的な性分化機構の解析」
「質量分析法を用いた苔類ゼニゴケのジベレリン類縁化合物の探索」
最近の博士学位論文のタイトルは以下の通りです。
「苔類ゼニゴケにおける性分化制御遺伝子ネットワークの研究」(2024)
「Functional analysis of the histidine kinase CKI1 in female gametogenesis of the liverwort Marchantia polymorpha」(2024)
「Exploring the biosynthsis and physiological fuction of gibberellin-related compounds in the liverwort Marchantia polymorpha」(2023)
「苔類ゼニゴケにおけるデータベース整備及びそれを活用した植物特異的なメチル基転移酵素ファミリー遺伝子の解析」(2023)
「苔類ゼニゴケの性染色体にコードされた性決定遺伝子の同定と機能解析」(2023)
「植物ホルモンオーキシンの減少が引き起こすゼニゴケ葉状体再生の分子機構」(2022)
「苔類ゼニゴケの器官形成における細胞系譜の寄与と核オーキシン信号伝達による制御機構の解析」(2023)
個別研究の他に、ゼニゴケゲノム解析に関するデータベース整備、遺伝子破壊・誘導発現系などの構築などゼニゴケの研究基盤作りはメンバーが一丸となって推進しています。

所属は?

京都大学 大学院生命科学研究科 統合生命科学専攻に所属します。学部教育は農学部応用生命科学科を担当し、植物分子生物学分野という名称で参加しています。

分野の由来は?

1985年に農学部付属生物細胞生産制御実験センター(当時)に植物DNA組換え研究領域として誕生しました。その後、農学部農芸化学科(その後、応用生命科学科に変更、大学院重点化により応用生命科学専攻)の1講座になり、1999年に創設された生命科学研究科に参画しました。学部教育には学部兼担として継続しています。2003年に研究室の初代教授である大山莞爾先生が停年退職し、河内が2004年に着任しました。

研究室のメンバーになるには?

意欲的な大学院生を募集しています。大学院生になるには生命科学研究科の修士課程の入学試験に合格する必要があります(願書提出7月上旬、入学試験8月上旬)。募集要項は、6月中旬から生命科学研究科研究科事務の教務掛で入手可能です。 興味がある方は、気軽に見学に来てください。

4年生は農学部応用生命科学科の学生が卒業研究に取り組んでいます。

学位取得者・取得予定者の日本学術振興会特別研究員制度への応募は積極的に支援しますので、教員(河内)に直接コンタクトしてください。

研修員、技術補佐員は随時募集していますので、お問い合わせください。

どこにあるのですか?

生命科学研究科は、京都大学吉田キャンパスに分散しています。遺伝子特性学分野は吉田キャンパス北部構内(今出川通りの北側)、農学・生命科学研究棟8階にあります。

どんな学会で発表していますか?

植物の基礎科学研究は日本植物生理学会、日本植物学会、応用基礎研究は日本農芸化学会や日本植物細胞分子生物学会、生命科学の基礎研究は日本分子生物学会で発表しています。また、国際学会や小規模の研究集会での発表も奨励しています。


その他、質問があれば教員までメールをください。大学院進学を考えている方、分属を希望する 3年生の方、日本学術振興会の特別研究員などへの応募を考えている方、ご気軽に是非スタッフまでご連絡ください。植物科学、生化学、分子生物学に興味のある1-2回生の見学も歓迎します。